今年も当社のスタッフが、アメリカ・カンザス州エンポリアで2026年5月30日に開催されたグラベルレースの最高峰イベント「UNBOUND Gravel(アンバウンド グラベル)」に参加しました。 今年の参加者、商品企画の井上が『前編:イベント本番まで』のレポートをお届けします。
「アメリカのグラベルイベントで200mile(320km)を走ってみなさい」
2025年の11月ごろ、このメッセージが届いた。 毎年パナレーサーのスタッフがUNBOUND Gravelに出ているけれど、まさか自分が出ることになるとは想像もしていなかった。
![]() |
丹波で雪が降る季節から 少しずつだが練習を開始 |
UNBOUND Gravelは、世界各国から選手が集まりグラベルレースに参加するとともに、自転車に関するメーカーが最新のグラベル機材をテストしている場所でもある。
しかも今年は20周年のセレブレーションイヤー!
グラベルレースは25/50/100/200/350mileと5コースが設定され、私は当社のスタッフが毎年挑戦している200mile(およそ320km)に出場する。
200mileは生半可な気持では完走することができない。本番の日まで、今回相棒として一緒に挑戦することとなった近藤(マーケティング部)と様々な情報交換や合同練習を行う。本番直前には、スローペースではあったが、200mile近い距離を走り切ることができるまでに仕上がった。
練習する中で、今回の我々のテーマは「自分らのペースを崩さない/他の人に流されない」に決まる。
そして出発の時を迎えた。
- 羽田空港で待機中
- カンザス空港にて ワールドカップに向け盛り上がる
■サイクリストへのやさしさ
カンザスに到着してから本番までの3日間は準備や試走、コースの下見を行った。
まず驚いたのは、広大な土地にどこまでも続く砂利道。日本で見たことない風景にテンションがあがる。畑一つとっても、地平線まで続く風景は圧巻である。 現地では言えなかったが、どこまで行っても変わらない風景に、30分ほどで私は嫌気がさしていたが。。。
(本番では、この広大な土地に苦しめられることに・・・)
次に驚いたのが、現地の方がサイクリストに対して非常にやさしいこと。 とくに車やトラックのドライバーは、交差点では自転車を優先、すれ違う時には合図を返してくれる。
その合図を出す仕草がカッコいいのである。
人によって手を上げてくれたり、指だけが動かしたりと、その違いも面白い。 合図を返してくれるのがとにかく嬉しくて、車とすれ違うたびにこちらから合図を送っていた。面倒なアジア人だと思われていたに違いない。
▶︎▶︎ちゃんと合図を返してくれる
■カンザスという土地
今回、我々がカンザスの地まで来た目的のひとつは、タイヤの試験を行うこと。先ほども書いたが、どこまでもまっすぐに砂利が続く道は日本にめったになく、試験を行うのに最適である。
![]() |
|
![]() |
なぜ試験を行うのに“どこまでもまっすぐに砂利が続く道”が最適なのか。数値のバラツキを減らすためである。 登りやコーナーがあると、どうしてもライダーの技術が数値に影響してしまう。
日本国内でも同様の試験を行っているが、試験の方法などに苦戦しており、今回試験をする中で、この環境が近くにあればと何度も心の中でつぶやいた。
![]() |
試験中の近藤に緊急車両が迫り、試験を中断する出来事もあった。 ここでは緊急車両もグラベルを走行するようだ、、 人が近づくとサイレンを消す配慮をしてくれた。 |
試験自体は実にシンプルで、可能な限り同じ条件で走行したときに、(試験用)タイヤごとでタイム差がどのように出るかを検証。
“可能な限り同じ条件で走行”というのがミソである。
地味ではあるが気の抜けない作業であり、こういった細かい試験の積み重ねが新たなタイヤ開発に繋がっていく。
■MMRとフリントストーン
「Minimum Maintenance Road(MMR:ミニマム メンテナンス ロード)」。最低限のメンテナンスしかされていない道で、走行は自己責任でといった悪名高い道である。この標識が出ている箇所が、今回のコースには3か所含まれていた。
イベント当日の天気予報は雨、MMRは最悪の状態になることが予想される。土が水分を含むと、通称「ピーナッツバター」と呼ばれる粘着質な泥に変わり、タイヤにまとわりつく。事前に試走を行ったが、アッという間に走行することができなくなった。。。
こうなると自転車を担ぐか、押して歩くしかなくなる。 泥から抜け出すのに時間がかかり、また体力も奪われる。この光景を目の当たりにしてからは、当日晴れることだけを祈った。
今年はもうひとつ懸念があった。 「フリントストーン」と呼ばれる石が浮く道がコースに設定されていたのである。フリントストーンとは、大昔に火打石や武器として使われていた、鋭くとがったナイフのような石のこと。
- フリントストーンエリアでは気を使った
- 鋭くとがったフリントストーン
こういった道を走る際は、サイドカットパンクに気を付ける必要がある。当社がサポートしている選手たちからも、このような道の対策として“+”仕様のタイヤの問い合わせを受けたことがある。
日本を走っているときには“+”仕様のタイヤの必要性を感じることは少なかったが、このように現地を走ってみると『なぜこの仕様や性能が求められるか』、肌で感じることができた。
■阿部選手の凄み
![]() |
![]() |
![]() |
選手と素人では、同じタイヤを使っても使い方や感じ方が違う。 そんな試験などで数値化できない部分について、選手の感性の重要性を改めて実感させられた。
また、プロフェッショナルな姿勢には何度も驚かされた。 ひとつ屋根の下で共同生活をする中で、時間があれば自転車でのトレーニングや下見に出かけ、朝晩には欠かさず体のケアを行っていた。さらに、ご自身の現在の状態や若手選手への思いなども率直に話してくださり、プロとして意識の高さが伝わってくる。
選手にとって当たり前の事なのかもしれないけれど、ひとつのことに徹底して打ち込む姿勢に、ただただ凄みを感じた。 
そんな阿部選手だが、おちゃめな一面も。エアーベッドにパンツ一丁で横になり、全身を乗せてベッドの空気を抜いているところを目撃したことがあった。 いたずらっぽい笑みを浮かべながら「遊んでないですよー」というその様子は、プロフェッショナルな姿勢とのギャップが大きく、思わず笑ってしまった。 (阿部選手は今回GRAVELKING ZX 700×45Cを使用)
■緻密と大雑把
私はこれまでスポーツ自転車については、一人でのんびりサイクリングする程度で、何か戦略を立てて走るなどしたことは皆無。 今回一緒に走った相棒の近藤は大学時代にサイクリング部に所属し、計画を立てて長距離を走った経験がある。その経験を活かし、今回もコースを見ながら直前まで戦略を立ててくれたのには感謝。
- (左)井上/(右)近藤
走行時の持ち物ひとつとっても性格の違いが出ていた。 私は「なんとかなるだろう」主義であるため、UNBOUND Gravelを過去に走った先輩から聞いた持ち物を最低限所持するのみだった。
ところが近藤は、様々な最悪の事態を想定した工具や道具を準備。さらにはMMRを現地で見て追加で道具を仕入れる姿に、「近藤もプロフェッショナルだ」と感じた。
緻密な近藤と大雑把な私。 イベント期間中大きくぶつかりあうことがなかったのは、性格が真逆だったからではと考えている。 近藤が、私のことをただ呆れていただけでなければの話だが。。。
![]() |
![]() |
![]() |
Unbound名物の記念撮影スポット 街はお祭り気分に包まれる
Foodmaker GRAVELKINGの Rick Ottema選手もブースに訪れてくれた
本番までの3日間は試験や試走だけでなく、街を散策したりご飯を食べたりと刺激が多く濃厚な時間の連続で、あっという間に本番を迎えることになった。
本番の様子は【後編】につづく。
▶︎▶︎【イベントレポート】アンバウンドグラベル2026 参戦記『後編:200mile レース本番』
▶︎▶︎UNBOUND Gravel





















