早い話、速いです。
パナレーサー開発担当#03 技術課 藤本 貫太
Q.業務の中で一番好きなことは?
やっぱり(タイヤの)パターンを考えることですね(笑)
Q.パターンはパソコン上で作るんですか?
AutoCADを使ってパターンを考えていきます。まずは手書きでラフ案を考えたりするんですけれども、最終的にはCADで書くことになります。
Q.それはこういう形状になったらこういう性能だからというのが経験則であったりするんですか?
経験則であったりもしますし、やっぱり見た目のイメージも大事なのでそういったところをうまく混ぜ合わせながら考えていきます。
Q.表現と機能性のギリギリのラインを目指すみたいなイメージですか?
そうですね、どうしても機能ばかり追求すると見た目としてもイマイチのものになってしまったりしますし、 見た目に寄ってしまうと機能を果たさないものになってしまうので。
Q.それは面白そうですね。
大変ですが、面白いです!
Q.高橋さんの方から、今回「AGILEST<アジリスト>」を開発するという話を聞いたときはどう思いましたか?
「今までのパナレーサーにないものを」ということだったので、まず「市場に受け入れてもらえるか?」というところが自分の中ではひとつ大きな疑問としてありました。
今までのフラッグシップモデル「RACE<レース>」シリーズではタイヤの断面形状が少し尖っていて、そのためコーナリングしたときに接地面を稼いでよくグリップするというような考え方でした。そこをまっさらにして、ラウンド形状という扱いやすい形にするところが構想のひとつとしてありましたので、それがパナレーサーを古くから使っていただいているお客様からどういったコメントがいただけるのかなという疑問もありましたし、またそれでいい性能が出るかというところも疑問だったので、正直かなり驚きました。
Q.それがうまくいきそうにないという感じだったんですか?
それが今までパナレーサーの売りというところでもあったので、そこを本当になくしてしまっていいのかなという不安です。
Q.実際に開発を始めてみてどうでしたか?
まずRACEシリーズからのグリップ力維持・向上と転がり抵抗値を抑えるというところが課題になっていまして、そこがなかなかクリアできずかなり苦戦しました。
Q.藤本さんの立場での試行錯誤というのはどういうものでしょうか?
金型への断面形状の落とし込みですね。一度金型を製作して試作を始めると、どうしても途中からの変更がしにくい部分もあったりするので、開発関係者を巻き込んでの事前検討をかなりいろいろ繰り返して、、、というようなやり方でした。
Q.金型を作った後にやり直し、ということはありましたか?
ありました。今回社として主力のタイヤということもあったので、もう何回もトライアンドエラーを繰り返して、いいものを作っていくぞというところで、全社一丸となって試作を重ねていったという感じですね。
Q.実際繰り返していく中で、「いいものになってきたぞ」という実感はありましたか?
ありました。実際に試験機上の数値が良くなっていっているということもありましたし、外部モニターテストでも手応えのあるコメントをいただけていたので。
Q.それを聞いてどんな気持ちでしたか?
単純にうれしかったです。
Q.開発の中で一番楽しかった点は?
その断面形状を決めるにあたっていろいろと議論して決まっていくんですけれども、それが走行テストで良いというコメントが返ってきたときですね。そのときはまさしく狙い通りというような思いで拳を握りしめました。
Q.開発の中で一番苦労した点は?
やっぱり転がり抵抗値とグリップ力というのは相反する性能なので、そこを両方ともRACEシリーズよりも良くするというところが一番苦労しましたね。素材の検討であったりとか、構造の見直しとか、すべて一から見直してトライアンドエラーを繰り返してというところが一番苦労しましたし、時間をかけたところです。
Q.そこを乗り越えたと感じたきっかけは何ですか?
やっぱり試作を繰り返した結果ですね。試験機上でいくら数値が良かったとしても、外部モニターに出したところであまり良いコメントをもらえなかったりということもあるので、外部モニターから良いコメントが返ってきたことがそういうきっかけになっています。
Q.その数値上と実走との差とは何ですか?
それがやっぱり人間の感覚だと思います。
我々が良いと思ってもいろんな方がいらっしゃるので、それぞれ受け取り方が違うことがあります。それを数値化するのが難しいのでたくさんモニターに出して長い期間を走ってもらって、というところがあるので試験機の数値だけでは一概に性能が良くなったと決められないですね。
Q .その中で今回のAGILESTは数値的にも反応的にもどういい感じになったんですか?
早い話、速いです!というイメージです。
Q.どれくらい違うものなんですか?
グリップ力が高い=走りが重たいというイメージになると思うんですけれども、そこをグリップ力を残しつつも軽く走るというところで、かなり速さを感じられるタイヤになっていると思っています。
Q.RACEシリーズと比べるとどうですか?
キャラクター的にまったく違うものなので、以前からパナレーサーの製品を使っていただいているお客様であればガラッと製品が変わったというような印象を受けられると思いますし、新たに「AGILEST<アジリスト>」を使っていただく方からすればかなり扱いやすいタイヤの印象を受けるかなというふうに思っています。
Q.そして速い、圧倒的に速い?
圧倒的に速いです。
Q.開発の手応えはありますか?
今のところかなりあります。実際レースに投入して使ってもらった選手からも良いコメントをもらっていて、ほぼ理想に近いものが出来たと実感しています。
Q.AGILESTはどんな方に使ってもらいたいですか?
今までパナレーサーが嫌いだったというような方にぜひ使ってもらいたいと思っています。
RACEシリーズのトレッドの断面形状が少し尖っているというのはさっきお話ししたと思うんですけれども、それによってクセが強いと感じていたお客様もおられると思うんです。そういった方に「扱いやすくなりました!」とオススメしたいですね。
Q.今回のAGILEST、パナレーサー史上どんなタイヤになりましたか?
受け入れてもらいやすい、レンジの広いフラッグシップタイヤになっていると思っています。
Q.藤本さんの言葉で表すと?
新しい言葉に置き換えるとするなら、「Panaracer Ratio<パナレーサーレシオ>」かなというふうに思います。キテます(笑)
Q.最後に伝えたいことはありますか?
本当に一から改良重ねてというか、ゼロからスタートしたような製品になっているので、是非一度手に取って試してもらいたいなというふうに思います。
Q.一度手に取って試したらどうなると思いますか?
「やっぱりパナレーサーやめられないな」と思ってもらいたいですね(笑)